「うちの親、まだまだ元気だから大丈夫」
──そう思っているうちに、いつの間にか話すタイミングを逃してしまう。
実は、親が認知症になる前にお金や家の話をしておくことが、家族にとって一番の「安心の贈り物」になります。いざ認知症になってしまうと、預金の引き出しや不動産の売却など、本人名義の資産管理ができなくなるケースが多いのです。
今回は、FPの視点から「今のうちに話しておくべき3つのこと」をわかりやすく解説します。
①「お金の管理」をどうするか
認知症になると、銀行口座は原則として本人しか操作できなくなるため、家族が代わりに生活費を下ろすことも難しくなります。
対策としては次の3つが代表的です。
| 対策 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 任意代理契約 | 親が元気なうちに「この人に任せる」と契約を結ぶ | 事前に公正証書で作成可能 |
| 家族信託 | 財産の管理・処分を家族に任せる制度 | 不動産・預金両方に対応可能 |
| 成年後見制度 | 認知症発症後に家庭裁判所が選任 | 柔軟性はやや低いが最終手段 |
FPの視点
「どれが合うか」は家庭状況や資産の種類で変わります。
信頼できる人に任せられるうちに、方向性を話しておくのが安心です。
② 「家をどうするか」
不動産は、いざというときに最も手続きが複雑になる資産です。
・親の名義のまま放置されている
・将来の住み替えや売却を話していない
・リフォーム費用を誰が負担するか決まっていない
こうした状態では、判断ができなくなった瞬間に動けなくなります。
今できる準備・家の名義・評価額・固定資産税の現状を確認
・相続人全員で「使う・売る・残す」の方向を話す
・家族信託を使えば、売却や管理を家族代表に任せられる

③ 「誰が何を引き継ぐか」
財産の話は、親が元気なうちにしてこそ意味があります。
「話しにくい」「まだ早い」と感じるかもしれませんが、早めに共有しておくことで家族の絆を守ることにつながります。
話し合うテーマの例・預金・不動産の全体像を“見える化”しておく
・相続人(子ども)同士の希望を聞く
・親が「自分の意思」で決めておくことを大切に
FPの視点
話し合いは“結論を出す場”ではなく、「情報を共有し、気持ちを整理する場」にするのがコツです。
まとめ
親が元気なうちは、「お金や家の話をすると、縁起でもない」と感じる人も多いでしょう。
ですが、実際に多くのご家庭でトラブルになるのは、“話さなかったこと”が原因です。
お金や家のことを話すのは、「心配だから」ではなく「守りたいから」。
将来の安心を見据えて、今できる準備を整えておくことが、何よりも家族への思いやりになります。
✅ 認知症になると、お金や不動産の手続きは家族でも難しくなる
✅ 元気なうちに、任意代理契約や家族信託で備える
✅ 家族みんなで「どうしたいか」を共有しておく
これらのステップを踏んでおけば、いざという時にも慌てず、家族全員が同じ方向を向いて行動できます。
「親にどう切り出せばいいかわからない」
そんな方も多いですが、FPの立場から、“家族が話しやすくなるきっかけ作り”をお手伝いできます。
一歩早く準備を始めたご家庭ほど、将来「話しておいて本当によかったね」と心から言える瞬間が来ます。
──そのために、今このタイミングで一緒に動き出しましょう。
