住宅ローンの話をしていると、「うちは固定金利だから安心だよ」「変動金利は将来が怖いよね」そんな言葉を耳にすることがあります。
もし自分が変動金利を選んでいたら、「この選択は間違いだったのかな?」と不安になるのも自然なことです。
でも、住宅ローンの金利タイプに誰にでも当てはまる正解はありません。
大切なのは、それぞれの仕組みを理解したうえで、自分の家計に合っているかどうかを考えることです。
固定金利と変動金利の基本を整理
まずは、固定金利と変動金利の違いを簡単に整理してみましょう。
固定金利は、借入時に決めた金利が一定期間、もしくは完済まで変わらないタイプです。
将来、金利が上がっても返済額は変わらないため、家計の見通しが立てやすいのが特徴です。
一方、変動金利は、半年ごとに金利が見直される仕組みになっています。
一般的に、借り始めの金利は固定金利より低く設定されています。
「固定=安心」「変動=危険」というイメージを持たれがちですが、実際にはそれぞれにメリットと注意点があります。
| 比較項目 | 固定金利 | 変動金利 |
|---|---|---|
| 金利の変化 | 一定期間、または完済まで変わらない | 半年ごとに見直される |
| 借入当初の金利 | 比較的高め | 比較的低め |
| 将来の安心感 | 高い(返済額が変わらない) | 金利上昇の可能性あり |
| 返済額の見通し | 立てやすい | 将来は変わる可能性あり |
| 金利上昇時の影響 | 影響なし | 徐々に返済負担が増える可能性 |
| 急激な返済額増加 | 起きない | 5年・125%ルールで抑制される |
| 総返済額 | 多くなりやすい | 抑えられる可能性がある |
| 向いている人 | 安心感を重視したい人 | 家計に余裕がある人 |
固定金利を選べば本当に安心なのか?
固定金利の最大の魅力は、「将来の金利上昇を気にしなくていい」という安心感です。
ただし、その安心感にはコストがあります。
固定金利は、将来の金利上昇リスクをあらかじめ織り込んだ金利設定になっているため、
最初から金利が高めです。
つまり、「金利が上がらなかった場合でも、上がるかもしれない分を含めて支払っている」という見方もできます。
結果として、
・総返済額が多くなりやすい
・途中で見直しがしにくい
といった点には注意が必要です。
変動金利は本当に危険なのか?
変動金利と聞くと、「すぐに返済額が上がってしまう」というイメージを持つ方も多いですが、実際にはそう単純ではありません。
多くの金融機関では、5年ルールと125%ルールという仕組みがあります。
5年ルールとは、金利が上がっても、返済額そのものは5年間変わらないというルールです。
125%ルールとは、返済額が見直される場合でも、前回の返済額の1.25倍までに抑えられるという仕組みです。
このため、金利が上がったとしても、急激に家計が苦しくなるケースは少なくなっています。
もちろん、将来的に負担が増える可能性はありますが、「いきなり払えなくなる」というイメージは、少し誤解があると言えます。
金利タイプ選びで一番大切な視点
住宅ローンの金利タイプを考えるとき、「どちらが得か?」という視点に目が向きがちです。
しかし、本当に大切なのは、家計として無理がないかどうかです。
・収入は安定しているか
・貯蓄に余裕はあるか
・教育費や老後資金の見通しはどうか
こうした点を総合的に見たうえで、多少金利が上がっても対応できるのか、それとも確実性を優先したほうがいいのかを考える必要があります。
金利の数字だけで判断すると、後から「思っていたのと違った」と感じることも少なくありません。
固定金利・変動金利が向いている人の傾向
あくまで一般論ですが、次のような考え方も参考になります。
固定金利が向いている人
・毎月の返済額を絶対に変えたくない
・将来の収入に不安がある
・安心感を重視したい
変動金利が向いている人
・収入にある程度の余裕がある
・貯蓄でリスクに備えられる
・返済期間中に繰り上げ返済を考えている
ただし、これはあくまで傾向です。
同じ条件でも、考え方によって選択は変わります。
金利の話よりも大切なこと
住宅ローンは、人生の中でも大きな支出です。
しかし、住宅ローンだけが家計のすべてではありません。
教育費、老後資金、相続のことなど、将来に向けて考えるべきお金はたくさんあります。
金利だけを見て判断してしまうと、他の大切な部分とのバランスを崩してしまうこともあります。
だからこそ、「住宅ローン単体」ではなく、「人生全体のお金の流れ」の中で考えることが重要です。
まとめ|不安になったら仕組みを知る
他人の一言で不安になるのは、決して悪いことではありません。
それだけ真剣に考えている証拠です。
ただし、大切なのは「誰がどう言ったか」ではなく、「自分の家計に合っているかどうか」です。
固定金利にも変動金利にも、それぞれ理由があります。
仕組みを理解し、自分の状況に照らして考えれば、
必要以上に不安になることはありません。
住宅ローンは、納得して選べていれば、それが正解です。
