年末年始は、家族みんなが集まる貴重なタイミングです。
普段なかなか話題にしづらい「相続」についても、顔を合わせて話すきっかけになります。
相続の準備というと、「お金持ちの話」と思われがちですが、実際には一般家庭の多くが関係する身近なテーマです。
預貯金や不動産、生命保険、車などもすべて“財産”に含まれます。
「元気なうちに少し整理しておこう」そんな小さな一歩が、将来の安心につながります。
ここでは、年末にチェックしておきたい5つのポイントをまとめました。
チェック1:財産の全体像を「見える化」しておく
まずは、家族がどんな財産を持っているかを把握することが第一歩です。
特に、親世代にとっては「どこに何があるのか」本人しか知らないケースが多く、いざというときに家族が困ることも。
・預貯金、株式、投資信託などの金融資産
・生命保険や年金、退職金の受取先
・不動産(土地・建物・駐車場・山林など)
・借入金やローンなどの負債
これらを一覧にまとめ、「財産目録」を簡単に作っておくだけでも、整理がぐっと楽になります。
最近は、エクセルやノート、エンディングノートを使ってまとめる方も増えています。
特に不動産については、登記簿上の名義が誰になっているかを確認しておくのが大切です。
名義が親のままになっている土地・建物は、相続時に手続きが複雑になることがあります。
チェック2:遺言書の有無を確認
相続トラブルの多くは、「遺言書がなかった」ことから発生します。
どんなに仲の良い家族でも、“誰が何を相続するのか”が曖昧なままだと意見が分かれてしまうもの。
もし遺言がまだ無い場合は、公正証書遺言をおすすめします。
公証役場で作成でき、法的に有効性が高く、紛失や改ざんの心配もありません。
内容を決める際は、
・財産の分け方だけでなく、家族へのメッセージも添える
・不動産や預金の正式名称を正確に書く
・証人を2人以上立てる
といった点にも注意しましょう。
遺言があるかどうかを家族で共有しておくことも大事です。
「存在は知っているけど、どこに保管されているかわからない」というケースが非常に多いので、保管場所を明確にしておきましょう。
チェック3:生前贈与の検討
生前贈与は、「もめない相続」のための強力な手段です。
1年に110万円までなら贈与税がかからない「暦年贈与」を活用して、少しずつ資産を移す方法があります。
ただし注意したいのは、「名義預金」にならないようにすること。
親が子どもの口座にお金を入れても、子どもがその存在を知らなかったり、親が自由に出し入れしていると「実質的には贈与していない」とみなされます。
贈与のたびに、
・贈与契約書を作成しておく
・子ども本人が通帳・印鑑を管理する
・贈与の事実を家族で共有する
といったことを徹底しておくと安心です。
また、教育資金や住宅取得資金の特例などもありますので、FPや税理士に一度相談するのがおすすめです。
チェック4:相続後の不動産をどうするか話し合う
親の住んでいる家を誰が引き継ぐか、という問題は非常にデリケートです。
「誰も住まない家」を放置しておくと、空き家問題や固定資産税の負担が続きます。
家族で集まった時に、
・誰が住み続けるのか
・売却するならいつ頃がいいのか
・貸す場合の管理方法はどうするか
などを、ざっくばらんに話し合っておくと良いでしょう。
最近は、「親が亡くなってからの話」ではなく、元気なうちに方向性を決めておく家族も増えています。
専門家に「相続後にどうすれば一番得か」をシミュレーションしてもらうのも効果的です。
チェック5:相続税がかかるかどうか試算してみる
相続税の課税対象になるかどうかは、財産の評価額によって大きく変わります。
地方の住宅地でも、土地が広ければ思った以上に評価額が高くなることがあります。
「使っていない土地」「複数の名義人がいる土地」も意外と多く、そのまま放置しておくと、相続登記や税の計算で手間がかかります。
おおまかな目安として、
基礎控除=3,000万円+600万円×法定相続人の数
これを超える財産を持っていると、相続税の対象になります。
税額の目安を知っておくだけでも、今後の贈与や保険の活用がスムーズになります。
まとめ:相続の準備は“家族の安心”を守る行動
相続の話題は、誰にとっても少し気が重いもの。
ですが、今のうちに準備しておくことで、家族の負担を減らし、関係を守ることができます。
「まだ早い」と思うより、「早めにやっておいてよかった」と思える準備を。
この年末は、ちょっとしたきっかけとして、「相続の話、少ししてみようか?」と声をかけてみてください。
相続対策の第一歩は「話し合うこと」。
書類の作成や税金の計算はあとからでもできますが、家族の気持ちをそろえるのは今しかできません。
不動産の整理や税金の試算など、専門家のサポートを受けながら進めると、より安心です。
