「子どもや孫に少しでも財産を残したい」
「今のうちに贈与しておいたほうがいいのかな?」
そんな声をよく聞きます。
2024年から贈与のルールが大きく変わったのをご存じですか?
「相続時精算課税制度」が見直され、
これまでより柔軟に“生前に財産を渡す”ことができるようになりました。
今回は、FPとして押さえておきたい新制度のポイントと、
“損をしない贈与の進め方”をわかりやすく解説します。
暦年贈与 〜コツコツ型の王道ルール〜
暦年贈与とは、1年間(1月〜12月)で110万円までの贈与が非課税になる制度です。
もっともシンプルで、毎年少しずつ財産を移す方法として長年親しまれています。
たとえば、毎年100万円を10年間贈与すれば、合計1,000万円を税金ゼロで家族に渡すことができます。
しかし、2024年の税制改正で新たに導入されたのが、「7年ルール」=亡くなる前7年以内の贈与を相続財産に加算する仕組みです。
📘 これまで: 3年以内の贈与を加算
📘 これから: 7年以内の贈与を加算(ただし4〜7年目分は各年100万円控除)
つまり、早く始めた人ほど有利になるということ。
「余裕があるうちにコツコツ贈る」ことが、損をしない第一歩です。
POINT・毎年の贈与契約書を残す
・通帳の入出金記録を明確にする
・亡くなる直前にまとめて贈るのは避ける
相続時精算課税制度 〜まとまった金額を渡したい人に〜
相続時精算課税制度とは、生前に2,500万円まで非課税で贈与できる制度です。
これを超えた分については一旦贈与税を支払い、最終的に相続時にすべてを精算して計算します。
以前は「一度選ぶと暦年贈与に戻せない」「毎年課税されてしまう」などの理由で敬遠されがちでした。
しかし、2024年の改正で大きく改善されました。
📘 改正前: すべての贈与が課税対象
📘 改正後: 毎年110万円までは非課税で贈与可能
これにより、「大きく贈る+少しずつ贈る」の両方ができるようになったのです。
POINT・家を子どもに名義変更したいときに有効
・事業承継にも活用しやすい
・契約内容・時期・評価額を明確に残すことが大切
結局どちらを選ぶとお得?
結論から言うと──
「目的」と「資産の種類」によって“お得”の基準は変わります。
それぞれにメリット・デメリットがあるため、状況に応じた使い分けが大切です。
💴 暦年贈与がお得になるケース
暦年贈与は、「毎年少しずつ贈与していく」スタイル。
贈与する金額が少なくても、時間を味方につけて節税できるのが強みです。
たとえば、毎年100万円を10年続ければ、合計1,000万円を非課税で贈与可能。
その間に相続財産が減るため、相続税全体も軽くなります。
ただし、2024年からは「7年ルール」で亡くなる前7年分が相続財産に加算されます。
👉 早く始めた人ほど有利。
長期的にコツコツ進めたい人に向いています。
🏠 相続時精算課税がお得になるケース
一方で、不動産や株式など、値上がりが見込まれる資産を早めに渡したい場合は、相続時精算課税制度のほうが有利になることがあります。
理由は、相続時に「贈与時点の評価額」で税額を計算するためです。
たとえば、今2,000万円の土地が、10年後に3,000万円に値上がりしても、税金は“贈与したときの2,000万円”で計算されます。
さらに2024年の改正により、
💡 毎年110万円までの非課税枠が追加され、少額贈与も柔軟に対応可能になりました。
以前のように「一度選ぶと損する制度」ではなくなったのです。
💡 お得に使うコツ
タイプ | 向いている人 | お得に使うポイント |
---|---|---|
暦年贈与 | 少額をコツコツ渡したい人 | 早く始めて7年ルールを活用。契約書と通帳で記録を残す |
相続時精算課税 | 不動産や株を早めに渡したい人 | 評価額が低いうちに贈与。改正後の110万円非課税も活用 |
つまり──
📘 時間を味方につけたいなら「暦年贈与」
📘 資産の値上がりに備えるなら「相続時精算課税」
この2つのどちらが“得”かは、財産の種類と家族の目的によって変わります。
贈与は「節税」だけでなく「想いの継承」
生前贈与は、税金対策だけでなく「家族への感謝を形にする行為」。
“お金を渡すこと”が目的ではなく、“どう生きてほしいか”を伝えるための手段です。
「いつ、どのくらい、どう渡すのがいい?」
そんなときは、専門家への相談を検討してみましょう。
まとめ
生前贈与は、単なる税金対策ではありません。
それは「家族の未来を自分の手でデザインする行動」です。
お金を“残す”だけでなく、“託す”ことに意味があります。
たとえば、子ども世代に教育資金や住宅購入資金として支援することは、
単なる贈与ではなく、次の世代の人生を応援する投資でもあります。
また、早めに贈与を計画することで、相続時のトラブル防止や税負担の軽減にもつながります。
人生のステージが変わる今こそ、「いつ」「誰に」「どのように」渡すのが最も良いかを考えるタイミング。
「どうすればいいかわからない」という人は一度ご相談下さい。
数字だけでなく、“想い”を形にした贈与設計を一緒に考えさせていただきます。
「家族のために、今できることを考えたい」
そう思った瞬間が、最初の一歩です。