相続によって不動産を受け継ぐと、多くの人が「とりあえず保留でいいかな」と考えがちです。
しかし、不動産は持っているだけで固定資産税がかかり、建物がある場合は老朽化による修繕リスクも発生します。
さらに、相続人が複数いるケースでは、売却や管理の方針が一致せず、長期間放置されてしまうケースも少なくありません。
特に近年は、空き家問題・土地の管理責任・相続登記の義務化(2024年〜)など、相続した不動産を巡るルールが大きく変化しているため、「何もしないまま持ち続ける」ことが一番リスクの高い選択肢になりつつあります。
この記事では、相続した不動産を売却する際に、必ず確認しておきたい5つのポイントを分かりやすく整理しました。「売った方が良いのか」「持ち続けた方が良いのか」判断材料をしっかり持てる内容になっています。
相続した不動産は“放置しない”ことが大切
相続で受け取った不動産は、感情的な理由や「忙しいから後回しに…」という理由で、つい長期間放置されてしまいがちです。しかし、放置には以下のようなデメリットが積み重なります。
固定資産税・管理費など、持っているだけで出ていくお金が大きい
土地や建物には毎年固定資産税がかかり、マンションであれば管理費・修繕積立金も必要です。
使っていない不動産に毎年数十万円かかっているケースも珍しくありません。
建物の老朽化が進むと売却価格が下がる
空き家は「使っていない期間」も劣化が進みます。
・雨漏り
・シロアリ
・カビ
・外壁の剥がれ
といった状態が進行すると、売却価格が大幅に下がることもあります。
相続人間のトラブルにつながる
複数人で共有している不動産の管理・売却の方針が揃わないと、話し合いが進まず、気づけば数年が経過…。
この状態になると、売却も管理も難しくなり、修繕費用を誰が負担するかでさらに揉めることも。
「とりあえず置いておこう」は、実は一番損をしやすい選択です。
まずは「名義(登記)」の確認が最優先
不動産を売るためには、まず登記名義が相続人の名前になっていることが必須です。
しかし、相続したのに登記がそのままの状態になっている人は非常に多いです。
相続登記が未了だと売却できない
名義が故人のままでは、買主も金融機関も手続きを進められません。
売却を検討する前に、必ず登記簿の名義をチェックしましょう。
2024年から相続登記が義務化
相続が発生してから3年以内に相続登記を行わないと、
・10万円以下の過料(罰金)
が科される可能性があります。
これにより「名義を放置する」という選択肢は事実上なくなりました。
共有名義の場合はさらに注意
相続人が複数いる場合、
・誰がどの割合で持つのか
・売却の意思は一致しているか
が重要です。
共有者の1人でも反対すると売却が進まないため、早めの話し合いが必要です。
不動産の現況をチェックすることが後々のトラブル回避に
相続した不動産が
・空き家
・賃貸中
・土地だけ
・老朽化した建物付き
など、状況はさまざまです。現況によって売却の流れも大きく変わります。
空き家の場合
外観は問題なく見えても、内部に劣化が進んでいるケースは多いです。
インスペクション(住宅診断)を活用することで、売れる価格の目安や必要な修繕の有無が分かり、買主にも安心してもらえます。
賃貸中の場合
入居者が住んでいる状態のまま売却する「オーナーチェンジ物件」として扱われます。
・入居者の契約内容
・賃料
・管理状況
を確認し、買主へ提示できるようにしましょう。
土地の場合は境界が重要
境界が不明確だと、買主が不安を感じ売却が進まないケースがあります。
測量図の有無や、隣地との境界確認など、「後回しにすると面倒な作業」は先に確認しておくとスムーズです。
現況の把握は、売却のスピードと価格に直結します。
税金の確認は必須(相続税・譲渡所得税)
不動産売却では、思っている以上に税金が関わります。事前に理解しておくことで、売却のタイミングや最適な方法が判断しやすくなります。
相続税がかかっている場合
相続税を支払った人は、3年以内に売却すれば「取得費加算の特例」を使える可能性があります。
取得費が増えるため、譲渡所得税の負担が軽くなるメリットがあります。
売却で利益が出た場合は譲渡所得税が発生
売却益に対して約20%(短期の場合は約39%)の税金がかかります。
・購入時の価格
・仲介手数料
・登記費用
・取得費加算
などを元に計算します。
空き家特例が使えるか確認
一定の条件を満たすと3,000万円の特別控除を使える可能性があります。
ただし要件が細かいため、制度の確認は必須です。
税金の知識は、売却後の手残りがどれくらいになるかを左右する重要なポイントです。
売却戦略は“最初の判断”が大切
不動産を売る時、焦って動くと損をしやすいものです。
特に相続した不動産は、思い入れがあったり、状態がバラバラだったりするため、戦略を立てて進めることが大切です。
急いで売らない方が良いケースもある
例えば、
・取得費加算を使える期間まで待つ
・リフォームして価値を上げる
・境界確定をしてから売る
など、少し時間をかけた方が売却価格が上がることもあります。
地元に強い不動産会社を選ぶ
不動産は「地域性」が非常に強い商品です。
全国チェーンより、その土地に詳しい不動産会社の方が適正価格を判断しやすい場合も多くあります。
相続と不動産をワンストップで相談できる専門家が便利
相続手続き・税金・不動産評価…
別々の窓口に相談すると、聞いた内容がバラバラで混乱しやすいものです。
相続と不動産に精通している専門家にまとめて相談することで、最短ルートで判断できます。
まとめ
相続した不動産は、持っているだけで費用・手間・トラブルリスクが積み重なります。
しかし、正しく現況を確認し、名義・税金・売却戦略を整理すれば、むしろ大きな資産価値を生み出すことも可能です。
不動産と相続は、どちらも専門知識が必要な分野です。
「うちの場合はどうすればいいんだろう…?」
という疑問は、状況を見てみないと判断が難しいことが多いです。
もし相続した不動産について
・売った方がいいのか
・そのまま持っておくべきか
・税金がどうなるのか
など迷っている場合は、一度状況を整理するだけでも方向性が見えてきます。
気軽に相談できる専門家が近くにいるだけで、判断のスピードも安心感も大きく変わります。
「まずは現状を知りたい」という段階でも、遠慮なく相談してみてくださいね。