仮想通貨は儲かっても税金が高すぎる」
こうした声を、これまで何度も聞いてきた方も多いのではないでしょうか。
実際、仮想通貨の税金は株式投資などと比べて不利な扱いが続いてきました。
しかし、2025年度の税制改正大綱で、仮想通貨税制が大きく前進する内容が明記され、注目を集めています。
この記事では、
・これまでの仮想通貨の税金
・今回の税制改正で何が変わるのか
・私たちにどんな影響があるのか
を、できるだけわかりやすく解説します。
これまでの仮想通貨の税金の仕組み
これまで、仮想通貨の利益は「雑所得」として扱われてきました。
雑所得は「総合課税」の対象となり、給与など他の所得と合算して税率が決まります。
そのため、
・利益が大きくなるほど税率が上がる
・最大で約55%(所得税+住民税)になる場合もある
という、非常に厳しい税負担になるケースがありました。
一方で、株式や投資信託は「申告分離課税」で税率は約20%。
同じ投資なのに、仮想通貨だけが圧倒的に不利という状況が続いていたのです。
税制改正大綱で何が変わる?
今回の税制改正大綱では、仮想通貨について次の2点が明確に示されました。
ポイント① 申告分離課税20%が明記
最大のポイントは、仮想通貨の利益を申告分離課税(約20%)とする方向性が明記されたことです。
これが実現すれば、
・所得が高い人ほど税負担が大きく下がる
・株式投資と近い条件で投資できる
など、仮想通貨を取り巻く環境は大きく改善します。
「税金が怖くて仮想通貨に手を出せなかった」という方にとっても、心理的なハードルは下がるでしょう。
ポイント② 損失の3年間繰越控除が可能に
もう一つ重要なのが、損失を3年間繰り越せる仕組みが示された点です。
これまで仮想通貨では、
・損をしても翌年以降に活かせない
・その年で損益がリセットされてしまう
という問題がありました。
今後は、今年の損失を翌年以降の利益と相殺できる可能性が出てきます。
これは、「一時的な値下がりがあっても冷静に投資できる」環境づくりにつながります。
| 項目 | 改正前(現行制度) | 改正後(税制改正大綱の内容) |
|---|---|---|
| 所得区分 | 雑所得 | 申告分離課税(予定) |
| 課税方式 | 総合課税 | 申告分離課税 |
| 税率 | 5%〜45%+住民税10%(最大約55%) | 約20%(所得税+住民税) |
| 他の所得との合算 | 給与・年金などと合算 | 他の所得とは分離 |
| 高所得者の税負担 | 非常に重い | 大幅に軽減 |
| 損失の繰越控除 | 不可 | 3年間の繰越控除が可能(予定) |
| 損益通算 | 原則不可 | 繰越期間内で利益と相殺可能 |
| 株式投資との扱い | 大きな差があった | ほぼ同水準に近づく |
| 確定申告 | 必要 | 必要(変わらず) |
| 投資のしやすさ | 税制面で不利 | 投資環境が改善 |
このように、税制改正が実現すれば、仮想通貨は「税金が重い投資」から、株式などと同じように考えやすい投資対象へと変わる可能性があります。
いつから実施されるの?
注意したいのは、税制改正大綱=すぐに制度が始まるわけではないという点です。
税制改正大綱は、
・政府の方針を示したもの
・今後、法律改正を経て正式に決まる
という位置づけです。
そのため、
・いつから適用されるのか
・どの取引が対象になるのか
といった細かい部分は、今後の動きを確認する必要があります。
この改正で影響を受ける人は?
今回の改正は、次のような方に影響があります。
・すでに仮想通貨を保有している人
・過去に損失を出した経験がある人
・これから仮想通貨投資を検討している人
・副業や資産形成の一部として考えている人
特に、「長期的な投資として考えたい人」にとっては、前向きな改正と言えます。
注意しておきたいポイント
今回の改正があっても、次の点には注意が必要です。
・すべての取引が対象になるとは限らない
・適用開始時期は今後の法改正次第
・確定申告が不要になるわけではない
・取引履歴の管理は引き続き重要
「税金が安くなるから何もしなくていい」というわけではありません。
FPの視点からひとこと
仮想通貨の税制が整ってきたことは、投資環境としては大きな前進です。
ただし、仮想通貨は価格変動が大きい資産です。
株式、投資信託、預貯金などと同じように、資産全体のバランスの中で考えることがとても大切です。
税金だけで判断せず、「自分の目的に合ったお金の使い方・増やし方」を意識したいところです。
まとめ
今回の税制改正大綱により、仮想通貨は「税制面で不利な投資」から、大きく改善される可能性が見えてきました。
・申告分離課税20%
・損失の3年間繰越控除
この2点は、仮想通貨投資を考える上で大きな意味を持ちます。
今後の正式決定を注視しつつ、正しい情報をもとに、落ち着いて準備していきましょう。
