「国債がNISAの対象になるかもしれない」というニュースが報じられ、気になっている方も多いのではないでしょうか。
これまでNISAといえば、投資信託や株式を使って資産を増やす制度というイメージが強くありました。
一方、国債は大きな利益を狙う商品ではなく、比較的安全性を重視してお金を運用するための商品です。
この国債がNISAの対象になれば、安全性を重視しながら、受け取る利子を非課税にできる可能性があります。
ただし、2026年7月時点では、国債のNISA対象化は正式に決定した制度ではありません。政府や政党内で具体的な検討が進められている段階です。
この記事では、国債がNISAの対象になると何が変わるのか、どのような人にメリットがあるのか、注意点も含めてFPの立場からわかりやすく解説します。
※この記事は2026年7月18日時点の情報をもとに作成しています。
結論|国債のNISA対象化は検討段階。実現しても全員に有利とは限らない
最初に結論をお伝えすると、国債をNISAの対象にする案は検討されていますが、2026年7月時点では正式決定していません。
財務大臣は2026年7月14日の記者会見で、国債の商品性の見直しや魅力向上について、検討を加速したいとの考えを示しました。
ただし、NISAは税制に関係する制度です。
実現するためには、対象となる国債の種類、年間投資枠、非課税になる利益の範囲など、今後さらに整理しなければならない点があります。
仮に国債がNISAの対象になれば、主に次のようなメリットが考えられます。
- 国債の利子にかかる税金が非課税になる可能性がある
- 株式より値動きを抑えた運用をNISA口座内で行える
- 退職金や老後資金の運用先として使いやすくなる
- 株式と国債を組み合わせて資産を分散しやすくなる
一方で、国債は株式や投資信託に比べて、一般的に期待できる利益が小さくなります。
そのため、限られたNISA枠を国債に使うべきかどうかは、年齢、資産額、運用期間、生活目的によって判断が変わります。

「国債がNISA対象になれば安心」と単純に決めるのではなく、自分のお金をいつ、何のために使うのかを先に考えることが大切です。
国債とは?初心者向けにわかりやすく解説
国債とは、国が個人や金融機関などからお金を借りるために発行する債券です。
簡単にいえば、国にお金を貸し、その見返りとして利子を受け取り、満期になると貸したお金が返ってくる仕組みです。
例えば、100万円分の国債を購入した場合、保有期間中は決められた利子を受け取り、満期には原則として100万円が返還されます。
国債には複数の種類がありますが、一般の方が利用しやすい代表的な商品が「個人向け国債」です。
個人向け国債には、主に次の3種類があります。
変動10年
満期は10年で、金利は半年ごとに見直されます。
市場の金利が上がれば、受け取る利子も増える可能性があります。
固定5年
満期は5年で、購入時に決まった金利が満期まで変わりません。
将来受け取る利子を計算しやすいことが特徴です。
固定3年
満期は3年で、こちらも購入時の金利が満期まで変わりません。
比較的短い期間で運用したい方に向いています。
個人向け国債は1万円から1万円単位で購入でき、利子は年2回支払われます。また、発行から1年経過後は中途換金できます。
国債と預金は何が違う?
国債と定期預金は、どちらも株式に比べると値動きが小さく、安全性を重視する人が利用しやすい商品です。
ただし、仕組みは異なります。
| 比較項目 | 個人向け国債 | 定期預金 |
|---|---|---|
| お金を預ける相手 | 国 | 銀行など |
| 利子の支払者 | 国 | 金融機関 |
| 最低購入額 | 原則1万円 | 金融機関による |
| 元本の扱い | 国が償還 | 預金保険制度の対象 |
| 中途解約 | 原則1年経過後 | 商品により可能 |
| 金利 | 募集時期・種類による | 金融機関による |
個人向け国債の場合、取扱金融機関が破綻しても、元本や利子は国が支払います。国債の権利自体も保護されます。
ただし、「国が発行しているから、どのような場合でも絶対に安全」と言い切ることはできません。
国の財政や信用に基づく金融商品であることは理解しておきましょう。
現在のNISAでは国債を直接購入できない
2026年7月時点のNISAでは、個人向け国債や一般的な国債を直接購入することはできません。
現在のNISAには、次の2つの投資枠があります。
つみたて投資枠
長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託などを購入できます。
年間投資枠は120万円です。
成長投資枠
上場株式や一定の投資信託などを購入できます。
年間投資枠は240万円です。
2つの枠を合わせると、年間最大360万円まで投資できます。
生涯を通じた非課税保有限度額は1,800万円で、そのうち成長投資枠は最大1,200万円です。
国債そのものは現在の対象商品に含まれていません。
ただし、国債を組み入れて運用する投資信託の中には、成長投資枠の対象になる商品があります。
これは「国債を直接買う」のではなく、「国債などを組み入れた投資信託を買う」という仕組みです。
なぜ国債をNISAの対象にする案が出ているのか
国債をNISAの対象にする案が出ている背景には、主に3つの理由があると考えられます。
個人の国債保有を増やしたい
日本国債は、銀行、保険会社、年金基金、日本銀行などが多く保有しています。
個人にも国債を保有してもらうことで、保有者を分散し、国債市場を安定させたいという狙いがあります。
金利が上昇し、国債の魅力が高まっている
長期間にわたり、日本では金利が極めて低い状態が続いていました。
そのため、個人向け国債を購入しても受け取れる利子が少なく、資産運用商品としての魅力は限定的でした。
しかし、現在は「金利のある世界」に戻りつつあり、以前よりも国債の利回りが注目されやすくなっています。
財務大臣も、金利環境が変化する中で、国民の資産配分を多様化することにはメリットがあるとの趣旨を示しています。
株式以外のNISA商品を増やしたい
現在のNISAは、株式や投資信託を中心とした制度です。
しかし、投資経験や年齢、資産形成の目的によっては、大きな値動きを避けたい人もいます。
国債がNISA対象になれば、安全性を重視する人にも利用しやすい制度になる可能性があります。
国債がNISA対象になると何が変わる?
現時点では制度内容が決まっていないため、以下は仮に国債の利子がNISAで非課税になる制度が導入された場合の考え方です。
現在の仕組み
個人向け国債の利子には、原則として20.315%の税金がかかります。
内訳は、所得税・復興特別所得税が15.315%、住民税が5%です。
NISA対象になった場合
NISA口座で購入した国債の利子が非課税になる制度であれば、税金を差し引かれずに利子を受け取れる可能性があります。
現在のNISAでも、対象となる株式や投資信託の売却益、配当、分配金は非課税です。

300万円を国債で運用した場合の具体例
国債がNISA対象になった場合、実際にどの程度の差が出るのでしょうか。
ここでは、300万円を年1%の利率で1年間運用したと仮定します。
通常口座の場合
年間利子は次のとおりです。
300万円×1%=3万円
この3万円に20.315%の税金がかかります。
3万円×20.315%=6,094円
したがって、税引後に受け取れる金額は、おおむね次のとおりです。
3万円-6,094円=2万3,906円
NISA口座の場合
仮に利子が全額非課税になるとすれば、3万円をそのまま受け取れることになります。
1年間の差
3万円-2万3,906円=6,094円
1年間だけを見ると、大きな差ではないと感じる方もいるかもしれません。
しかし、運用金額や利率、保有期間が大きくなると差も広がります。

国債をNISAで買うメリット
利子にかかる税金を抑えられる可能性がある
最大のメリットは、国債から受け取る利子が非課税になる可能性があることです。
通常は利子の約20%が税金として差し引かれます。
NISA対象になれば、税引後の手取りを増やせる可能性があります。
値動きを抑えた運用がしやすくなる
株式や株式投資信託は、経済情勢や企業業績によって大きく値下がりすることがあります。
一方、個人向け国債は、満期まで保有することを前提とすれば、額面金額で償還される仕組みです。
大きな値上がり益は期待しにくいものの、資産を守る役割として利用できます。
NISA内で資産を分散できる
例えば、NISA資産のすべてを株式投資信託にするのではなく、一部を国債に振り分けることで、資産全体の値動きを抑えられる可能性があります。
特に、退職が近い人や、数年以内に使う予定のある資金については、株式だけで運用することに不安を感じる場合があります。
そのようなときに、国債が選択肢になる可能性があります。
投資初心者が始めやすくなる
株式や投資信託は、値下がりへの不安から始められない人も少なくありません。
国債は仕組みが比較的わかりやすく、受け取れる利子や満期も確認しやすいため、資産運用の入口になりやすい商品です。
国債をNISAで買うデメリットと注意点
NISA枠を使う価値があるか考える必要がある
NISAには年間投資枠と生涯の非課税保有限度額があります。
現在の制度では、年間最大360万円、生涯の非課税保有限度額は1,800万円です。
国債は、株式や株式投資信託よりも期待できる利回りが低い傾向があります。
そのため、非課税効果だけを比較すると、利益が大きくなりやすい商品をNISAで保有した方が有利になる場合があります。
例えば、100万円を年1%で運用した場合の年間利益は1万円ですが、年5%なら5万円です。
同じ100万円分のNISA枠を使っても、発生する利益が大きいほど非課税効果も大きくなります。
ただし、年5%の利益が確実に得られるわけではありません。
利益の大きさだけでなく、値下がりリスクも含めて考える必要があります。
インフレに負ける可能性がある
物価上昇率が国債の利率を上回ると、実質的なお金の価値は減少します。
例えば、国債の利率が年1%でも、物価が年3%上昇した場合、数字上は利子を受け取れても、購入できる物やサービスは相対的に減ってしまいます。
国債は元本を守るための有力な選択肢ですが、長期的な物価上昇に備えるには、株式などの成長資産との組み合わせも必要です。
発行後1年間は原則として中途換金できない
個人向け国債は、原則として発行後1年が経過するまで中途換金できません。
1年経過後は換金できますが、直前2回分の利子相当額が差し引かれます。
したがって、近いうちに使う予定のお金や、急な支出に備える生活予備費をすべて国債に回すべきではありません。
「国債」と「個人向け国債」は同じではない
国債には個人向け国債以外にも、市場で売買される利付国債などがあります。
市場で売買される国債は、満期前に売却すると、その時点の金利や市場価格によって売却価格が変わります。
金利が上昇すると、すでに発行されている低金利の国債価格は下がる傾向があります。
そのため、制度の対象がどの種類の国債になるかによって、リスクや使い方は大きく変わります。

「国債なら何でも同じ」ではありません。個人向け国債なのか、市場で売買する国債なのかによって、途中売却時の扱いも変わります。
ケース別|国債をNISAで買うのが向いている人
国債のNISA対象化が実現したとしても、すべての人に向いているわけではありません。
ここでは、ケース別に考えてみましょう。
ケース1|50代・60代で老後資金を守りたい人
退職が近づいている人や、すでに退職金を受け取った人は、資産を大きく増やすことよりも、大きく減らさないことが重要になります。
株式だけに偏っていると、相場下落時に老後資金が大きく減る可能性があります。
このような人は、資産の一部を国債に振り分けることが選択肢になります。
ただし、老後期間は20年、30年と続く可能性があります。
すべてを国債にすると、インフレに対応できない可能性があるため、株式や投資信託も一定割合残す考え方が必要です。
ケース2|20代・30代で長期運用できる人
20代や30代で、老後資金を20年以上かけて準備する場合、一般的には株式を含む投資信託の方が長期的な成長を期待しやすくなります。
そのため、限られたNISA枠を国債に多く使うよりも、つみたて投資枠で低コストの分散型投資信託を積み立てる方法が優先されることがあります。
ただし、値下がりが怖くて投資自体を始められないのであれば、一部を国債にして心理的な負担を抑える方法もあります。
ケース3|数年後に住宅購入やリフォームを予定している人
数年後に住宅購入、リフォーム、子どもの進学などを予定している場合、その資金をすべて株式で運用するのは注意が必要です。
使う直前に相場が下落すると、必要な金額を準備できない可能性があるためです。
使用時期が決まっている資金については、預金や個人向け国債など、値動きの小さい資産へ移していく考え方が適しています。
ただし、個人向け国債は原則として発行後1年間は換金できないため、使う時期との調整が必要です。
ケース4|預金だけで資産を保有している人
すべてのお金を普通預金や定期預金で保有している人にとって、国債は比較的取り組みやすい運用先です。
国債がNISAの対象になれば、預金以外の選択肢を持ちつつ、利子の非課税メリットを受けられる可能性があります。
ただし、生活費や緊急予備資金は、すぐに引き出せる預金で確保しておく必要があります。
ケース5|すでにNISA枠を株式で使い切っている人
すでに年間360万円のNISA枠を使い切っている人は、国債が対象になっても、その年に追加で投資できるとは限りません。
国債専用の別枠が新設されるのか、現在の成長投資枠を使うのかによって判断は大きく変わります。
この点は、今後の制度設計で特に注目したいポイントです。
国債をNISAで購入する前に確認したい5つの項目
制度が実現した場合でも、次の順番で確認することが大切です。
1.いつ使うお金なのか
1年以内に使う予定のお金は、国債よりも普通預金などで確保しておく方が適しています。
2.いくらまで値下がりに耐えられるか
株式の値動きが不安であれば、国債の割合を増やす方法があります。
一方、長期間運用でき、値下がりにも耐えられるなら、株式などの成長資産を持つ意味があります。
3.現在のNISA枠を何に使っているか
すでに投資信託や株式でNISA枠を使っている場合、国債を追加すると、他の商品を購入できる枠が減る可能性があります。
4.預金をどの程度持っているか
生活費や緊急予備資金が不足している状態で、国債や投資商品を増やすべきではありません。
一般的には、会社員であれば生活費の3か月から6か月分、自営業者であれば6か月から1年分程度を目安に、すぐ使える預金を確保する考え方があります。
ただし、収入の安定性や家族構成によって必要額は変わります。
5.国債の種類と換金条件
満期、金利タイプ、換金できる時期、換金時に差し引かれる金額を確認しましょう。
よくある質問
Q1.国債はすでにNISAで購入できますか?
2026年7月時点では、個人向け国債や一般的な国債をNISA口座で直接購入することはできません。
現在は、国債をNISA対象に追加する案が検討されている段階です。
なお、国債を組み入れた一定の投資信託をNISAで購入できる場合はあります。
Q2.国債のNISA対象化はいつから始まりますか?
現時点では開始時期は決まっていません。
法案や税制改正の議論、制度設計、国会での審議などを経る必要があります。
報道だけを見て、すぐに始まると判断しないようにしましょう。
Q3.個人向け国債なら元本割れしませんか?
個人向け国債は、満期時には額面金額で償還されます。
また、発行後1年を経過すれば中途換金できますが、直前2回分の利子相当額が差し引かれます。
ただし、一般の国債を市場価格で売却する場合は、価格変動によって購入価格を下回る可能性があります。
Q4.国債と定期預金ではどちらが有利ですか?
一概には言えません。
金利、預入期間、途中解約条件、取扱金融機関の手数料などを比較する必要があります。
すぐに使う可能性があるお金は預金、1年以上使わない資金は個人向け国債という分け方も考えられます。
Q5.国債がNISA対象になったら、すぐに買うべきですか?
制度開始だけを理由に、すぐ購入する必要はありません。
対象となる国債、金利、非課税枠、換金条件などを確認し、自分のライフプランや資産配分に合うか判断しましょう。
特に、すでにNISAで投資信託を積み立てている人は、国債に枠を使うことで将来の成長機会が減らないかも検討する必要があります。
重要なのは「NISAを使うこと」ではなく「お金の役割を分けること」
NISAは税金を抑えながら資産形成できる有利な制度です。
しかし、NISAを利用すれば必ず資産形成が成功するわけではありません。
大切なのは、持っているお金を目的別に分けることです。
例えば、次のように整理します。
すぐ使うお金
毎月の生活費や急な病気、修理などに備えるお金です。
普通預金など、すぐ引き出せる場所に置きます。
数年以内に使うお金
住宅購入、車の買い替え、教育費、リフォームなどに使う予定のお金です。
定期預金や個人向け国債など、値動きが小さい方法が中心になります。
10年以上先に使うお金
老後資金など、長期間使う予定のないお金です。
一定の値下がりを受け入れられる場合は、株式や投資信託を使って成長を目指すことができます。
国債がNISA対象になれば、このうち「数年以内に使うお金」や「資産全体の値動きを抑える部分」に利用しやすくなる可能性があります。


「自分の場合、NISAで国債を持つべきか、投資信託を続けるべきか。家計や今後の予定も含めて整理したい方は、一度ご相談ください。」
▶ 無料で相談してみる
まとめ|国債のNISA対象化は資産運用の選択肢を広げる可能性がある
国債をNISAの対象にする案は、2026年7月時点では検討段階です。
正式に制度化されれば、国債の利子にかかる税金を抑えながら、安全性を重視した運用ができる可能性があります。
一方で、国債は株式や投資信託ほど大きな成長を期待する商品ではありません。
また、NISAの投資枠は無制限ではないため、国債に枠を使うべきかどうかは慎重に判断する必要があります。
今回のポイントをまとめると、次のとおりです。
2026年7月時点では、国債のNISA対象化は正式決定していない
現在、国債の利子には原則20.315%の税金がかかる
NISA対象になれば、利子が非課税になる可能性がある
国債は資産を守る役割として利用しやすい
ただし、インフレやNISA枠の使い方には注意が必要
年齢や目的によって、国債が向いている割合は異なる
大切なのは、「NISAで買える商品だから選ぶ」のではなく、自分の生活設計に合った商品を選ぶことです。
預金、国債、投資信託、株式には、それぞれ異なる役割があります。
家計の状況、住宅購入、教育費、老後資金などを整理したうえで、無理のない資産配分を考えていきましょう。
