「マンションは相続税の評価額が低くなる」そんな話を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。
父親が亡くなり、父が住んでいた分譲マンションを相続することになったAさんも、その一人でした。
マンションの市場価格はそれなりに高いものの、相続税を計算するときの評価額はもっと低くなると聞いていたため、それほど心配していませんでした。
ところが、実際にマンションの相続税評価額を確認してみると、「あれ?思っていたより評価額が高い……」
実は、居住用マンションの相続税評価のルールは、2024年(令和6年)1月1日から変わっています。
しかも、この変更は「都心のタワーマンションだけ」の話ではありません。
一般的な分譲マンションでも、新しい評価方法の対象になる可能性があります。
この記事では、マンションの相続税評価がなぜ変わったのか、評価額がどのくらい変わる可能性があるのか、親がマンションを所有している場合に何を確認しておけばよいのかを、できるだけわかりやすく解説します。
※本記事は2026年8月時点の制度・国税庁公表資料をもとに作成しています。

「マンションは一般住宅に比べて相続税評価額が下がる、と思っていた人も多いと思います。」
2024年からマンションの相続税評価ルールが変わった
まず結論からお伝えします。
2024年(令和6年)1月1日以後に相続・遺贈・贈与によって取得した一定の居住用区分所有財産について、新しい評価方法が適用されています。
これまでのマンション評価では、基本的に、「土地部分の評価額+建物部分の評価額」によって相続税評価額を計算していました。
現在は一定の場合、この従来の評価額に「区分所有補正率」を使って補正します。国税庁も、令和6年1月1日以後に取得した居住用区分所有財産について、土地・建物それぞれの価額に区分所有補正率を乗じて評価する場合があるとしています。
この改正で特に影響を受ける可能性があるのが、「実際に売買される価格に比べて、従来の相続税評価額が低くなっていたマンション」です。
つまり、マンションそのものの価値が急に上がったわけではありません。
相続税を計算するときの「評価の仕方」が変わったということです。
2024年からマンションの評価はどう変わった?
従来の土地・建物の評価方法そのものが、すべてなくなったわけではありません。
大きな違いは、その評価額に対して、一定の場合に「区分所有補正率」を使った補正を行うことです。
従来の方法で土地・建物を評価
↓
マンションの条件から区分所有補正率を計算
↓
必要に応じて土地・建物の評価額を補正
という流れです。

評価額が上がるかどうかのポイントは「60%」
ここは今回の改正で非常に重要なところです。
新しい評価方法では、まずマンションの、
築年数
総階数
所在階
敷地持分の状況
などから「評価乖離率」を計算します。
さらに、評価水準=1÷評価乖離率という計算を行います。
そして、この評価水準が0.6(60%)未満の場合には、区分所有補正率=評価乖離率×0.6として評価額を補正します。
少し難しいですよね。
一般の方は、計算式そのものを覚える必要はありません。
重要なのは、「市場価格と従来の相続税評価額との開きが大きいマンションについて、評価額を市場価格の60%程度まで近づける方向で補正する仕組みが導入された」とイメージしておけばよいでしょう。
ただし、実際の市場価格をそのまま使って60%を計算する制度ではありません。国税庁が定めた評価乖離率の算式によって判定する点には注意が必要です。

「ポイントは“タワマンかどうか”だけではありません。築年数や所在階、敷地持分などによって補正率が決まります。」
実際にマンションの評価額はどのくらい変わる?
では、具体的に見てみましょう。
国税庁がマンション評価の説明に使用している事例では、従来の評価方法による土地部分は、1,050万円、建物部分は、400万円となっています。
したがって、補正前なら、1,050万円+400万円=1,450万円です。
この事例について、区分所有補正率を1.2258として計算すると、土地部分は、1,050万円×1.2258=1,287万900円となり、建物部分は、400万円×1.2258=490万3,200円となります。
合計すると、約1,777万円です。
つまり、
補正前:約1,450万円
↓
補正後:約1,777万円
となり、相続税評価額が約327万円上がることになります。
もちろん、すべてのマンションがこの金額だけ上がるわけではありません。
築年数や階数、敷地持分などによって区分所有補正率は異なります。

「タワマンじゃないから関係ない」は間違い?
今回の制度変更について、「タワーマンションの節税対策でしょ?」と思っている方もいるかもしれません。
しかし、ここは注意が必要です。
新しい評価方法の対象は、タワーマンションだけに限定されていません。
国税庁は対象を「居住用の区分所有財産(いわゆる分譲マンション)」としています。
したがって、一般的な分譲マンションでも条件に該当すれば、新しい評価方法による計算が必要になります。
逆に、すべての区分所有建物が対象になるわけでもありません。
例えば、事業用のテナントやオフィスなど、そもそも「居住用の区分所有財産」に該当しないものがあります。
「タワマンか、普通のマンションか」だけで判断しないことが大切です。
賃貸している区分マンションを相続した場合は?
親が自宅マンションではなく、投資用として区分マンションを所有しているケースもあるでしょう。
この場合も、今回のルールと無関係とは限りません。
2024年1月1日以後に相続などで取得した居住用の区分所有財産については、まず新しいマンション評価のルールを確認する必要があります。
そのうえで、相続時に第三者へ賃貸しているなどの要件を満たせば、建物については貸家としての評価、土地部分については貸家建付地としての評価が関係してきます。
例えば貸家は、原則として、自用家屋としての価額-自用家屋としての価額×借家権割合×賃貸割合によって評価します。
土地についても、貸家の敷地として一定の要件を満たせば貸家建付地として評価します。
つまり、「賃貸マンションだから評価額が下がる」だけで考えるのではなく、新しい区分所有財産の評価→賃貸状況を踏まえた評価という順序で確認する必要があります。
マンションを相続する人が注意したい3つのこと
ここまで読んで、「では、親がマンションを持っている場合は何に注意すればいいの?」と思った方もいるでしょう。
特に注意したいのは次の3点です。
1.以前計算した相続税評価額をそのまま使わない
例えば、数年前に相続対策としてマンションの評価額を計算していたとします。
しかし、2024年から評価方法が変わっているため、その金額を現在もそのまま使えるとは限りません。
さらに、築年数なども評価乖離率の計算要素になるため、相続が発生した時点の情報で確認する必要があります。
2.固定資産税評価額=マンションの相続税評価額ではない
これも間違えやすいところです。
固定資産税の納税通知書を見ると、建物の固定資産税評価額が記載されています。
しかし、それだけを見て、「このマンションの相続税評価額は○○万円だ」とは判断できません。
マンションには土地部分である敷地利用権もありますし、2024年以降は一定の場合に区分所有補正率による補正も必要です。
3.売却価格=相続税評価額でもない
不動産会社から、「このマンションなら4,000万円くらいで売れます」と言われたとしても、相続税評価額が4,000万円になるわけではありません。
売却価格と相続税評価額は、そもそも目的も計算方法も違います。
ただし、相続後に売却する可能性があるなら、「相続税評価はいくらか」だけでなく、「実際にはいくらで売れるのか」も把握しておく必要があります。
よくある質問
Q1.2023年以前に購入したマンションも新しい評価方法の対象ですか?
対象になる可能性があります。
ポイントは「いつ購入したか」ではなく、原則としていつ相続・遺贈・贈与によって取得したかです。
国税庁は、2024年(令和6年)1月1日以後に相続・遺贈・贈与によって取得した居住用の区分所有財産について、新しい評価方法を適用しています。
例えば、親が2000年に購入したマンションでも、子どもが2026年に相続すれば、新しい評価方法を確認する必要があります。
Q2.タワーマンションだけが対象ですか?
いいえ。
一般的な分譲マンションも対象になる可能性があります。
「タワマン節税」のイメージが強い制度ですが、対象はタワーマンションだけに限定されていません。
Q3.親が住んでいる普通の分譲マンションも対象ですか?
一定の要件を満たす「居住用の区分所有財産」であれば対象になり得ます。
「投資用マンションだけ」「高級マンションだけ」という制度ではありません。
Q4.賃貸している区分マンションも対象ですか?
居住用の区分所有財産に該当すれば、新しい評価方法を確認する必要があります。
そのうえで、賃貸状況など一定の要件を満たせば、貸家や貸家建付地としての評価も検討します。
Q5.自分で評価額を計算できますか?
国税庁は「居住用の区分所有財産の評価に係る区分所有補正率の計算明細書」とExcelの計算ツールを公開しています。
ただし、実際の相続税計算では、マンションの評価だけでなく、他の相続財産や債務、各種控除・特例なども関係します。
申告が必要なケースや判断が難しいケースでは、税理士などの専門家へ確認することをおすすめします。
「マンション相続」で本当に大切なこと
マンションの相続というと、「相続税はいくらになるの?」という点に目が行きがちです。
もちろん重要です。
しかし、マンションを相続する場合は、税金だけを見ていても十分ではありません。
例えば、
- 誰がマンションを相続するのか
- 相続した人がそのまま住むのか
- 誰も住まないなら賃貸するのか
- 売却するのか
- 現在いくらで売却できるのか
- 管理費や修繕積立金はいくらか
- 将来の大規模修繕はどうなっているか
- 住宅ローンなどの債務は残っていないか
なども確認する必要があります。
特にマンションは、所有しているだけでも管理費や修繕積立金、固定資産税などがかかります。
「とりあえず相続してから考えよう」としていると、誰も住まないマンションの維持費だけを払い続けることにもなりかねません。
そのため、マンション相続では、「税金」+「不動産としての価値」+「相続後の使い方」をセットで考えることが重要です。

「親がマンションを持っているけれど、相続したらどうすればいいのか分からない。評価額だけでなく、売却・賃貸・相続後の活用まで含めて整理したい方は、お気軽にご相談ください。」
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まとめ|「マンションの相続税評価は低い」と思い込まないことが大切
2024年1月1日から、一定の居住用区分所有財産について相続税・贈与税の評価方法が変わりました。
今回のポイントを整理すると、
POINT・2024年から一定の分譲マンションに新しい評価方法が適用されている
・従来の土地・建物の評価に「区分所有補正率」による補正が加わる場合がある
・評価水準が60%未満の場合には評価額を引き上げる方向の補正が行われる
・タワーマンションだけが対象ではない
・一般的な分譲マンションでも対象になる可能性がある
・賃貸中の区分マンションも新ルールを確認する必要がある
・相続税評価だけでなく、売却・賃貸・維持費なども一緒に考えることが重要
となります。
親がマンションを所有している場合、「相続が起きたら、そのとき考えればいい」ではなく、「現在の価値はいくらか」「相続税評価はいくらか」「相続後にどうするか」を元気なうちから家族で話しておくことをおすすめします。
相続税については税理士、不動産の価格や売却・活用については不動産の専門家など、必要に応じて専門家を活用しながら準備しておくと安心です。
