年末が近づくと、会社から「年末調整の書類を提出してください」と案内が届きます。
でも、そもそも年末調整って何をするのか、いつまでに何を出せばいいのか、正しく理解している人は意外と少ないですよね。2025年は控除制度にも細かな変更があり、提出書類を見落とすと“損するケース”もあります。
今回は、FPの視点で「年末調整の基礎」から「控除を最大限に活かすコツ」まで、わかりやすくまとめました。
年末調整とは?仕組みと目的
年末調整とは、1年間に支払った所得税を正しく計算し、払い過ぎや不足分を精算する手続きのことです。
会社員やパート・アルバイトの方は、勤務先が代わりに税額を再計算してくれるため、確定申告が不要になります。
逆に、ここで控除申告をしないと「本来より多く税金を払ってしまう」こともあるので要注意です。
年末調整はいつからいつまで?【2025年版スケジュール】
一般的な企業では、年末調整は11月中旬~12月中旬に実施されます。
国税庁の指針では、2025年は以下のスケジュールを想定しています。
| 内容 | 時期 | ポイント |
|---|---|---|
| 書類配布 | 10月下旬〜 | 控除証明書の提出準備を開始 |
| 書類提出期限 | 11月中旬〜下旬 | 会社によって異なるため早めの確認を |
| 精算・還付 | 12月給与支給時 | 還付金は給与と一緒に支給される |
年末調整は、確定申告の“簡易版”のようなものです。
控除を正確に申告できれば、還付金が戻ってくる可能性があります。
会社への提出書類
以下の控除は会社へ書類を提出することで対応してもらえます。
書類を提出し忘れたりすると、翌年度の税金が高くなってしまう可能性があるので必ず提出しましょう。
① 生命保険料控除
生命保険・医療保険・個人年金保険に加入している人は、保険会社から届く「控除証明書」を添付することを忘れずに。
② 配偶者控除・扶養控除
配偶者や子ども・親を扶養している場合は、年収や所得の条件を確認。
扶養控除申告書の提出は必須です。
パート収入が130万円を超えると対象外になる場合もあります。
③ 地震保険料控除
地震保険を払っている方、領収書や証明書類の提出が必須です。
以下は、自身で確定申告する必要があるので注意が必要です。
末調整では受けられない、確定申告が必要な主な控除
① 医療費控除
・1年間(1月〜12月)に支払った医療費が 合計10万円(または所得の5%)を超えた場合に申請可能。
・自分・配偶者・生計を一にする家族の分を合算できる。
・病院代・薬代・通院交通費も対象(美容整形や健康診断などは除外)。
📌 年末調整では反映されないため、確定申告が必須。
② セルフメディケーション税制
・医療費控除の特例。
・指定の市販薬を年間12,000円以上購入した場合に、上限88,000円まで控除対象。
・対象薬には「★マーク」や「セルフメディケーション税控除対象」と記載あり。
・医療費控除と併用不可(どちらか一方を選択)。
③ ふるさと納税(ワンストップ特例を利用していない場合)
・寄附金控除の一種。
・5自治体を超える寄附を行った場合、確定申告をしないと控除されない。
・ワンストップ特例を使った人でも、転職・引っ越しなどで住所変更があると無効になる場合があるので注意。
④ 雑損控除(災害・盗難・事故など)
・火災・台風・地震などの災害で損害を受けた場合や、詐欺・横領などで資産を失った場合に申告可能。
・年末調整では対象外なので、自分で確定申告が必要。
・控除額は被害額や所得によって異なるため、証明書類(罹災証明書など)が必須。
⑤ 寄附金控除(政治献金・学校・NPOなど)
・国や自治体以外(認定NPO法人・学校法人など)への寄附も対象。
・ふるさと納税以外の寄附はワンストップ申請できないため、確定申告で控除申請する必要がある。
⑥ 住宅ローン控除(初年度のみ)
・新築・購入・増改築などで住宅ローンを利用した場合、最初の1年だけ確定申告が必要。
・2年目以降は年末調整で自動反映される。
・控除額は「年末のローン残高 × 1%(最大13年間)」が目安。
⑦ 雑所得控除(副業・アフィリエイト・仮想通貨など)
・給与以外の所得(年間20万円超)がある場合は確定申告が必要。
・申告しないと所得税だけでなく住民税にも影響。
よくあるミスとその対策
・控除証明書を失くしてしまう → 各保険会社・自治体で再発行可能。
・配偶者の収入見込みを間違える →「所得」で判断することを忘れずに。
・副業・2カ所勤務の人が年末調整できていない → 確定申告が必要になるケースあり。
FPとしてのアドバイスは、書類をまとめて保管し、11月上旬には内容を確認しておくこと。
ギリギリになって探すより、早めの準備が節税につながります。
まとめ
年末調整は、「面倒だから会社任せ」で済ませてしまう人ほど、控除漏れのリスクが高くなります。
保険・扶養・寄附金など、自分が対象になる控除をきちんと申告するだけで、数千円〜数万円の還付を受けられることもあります。
「この控除、うちも対象になる?」「ふるさと納税はどう書けばいい?」という疑問がある方は、ぜひご相談ください。
書類の見方から控除の確認まで、わかりやすくサポートします。
