マイホームを探していると、相場より安く売られている物件を見つけることがあります。
「この価格ならチャンスかも」と、つい前のめりになってしまう人も少なくないでしょう。
しかし、不動産や税制の専門家は「価格が安い理由」を深く考えることが重要だと指摘しています。
家は人生でも最大級の買い物です。購入後に後悔しないためには、価格だけで判断せず、長期的なコストや資産としての価値、住宅ローン減税の適用可否など、複数の視点からチェックする必要があります。
この記事では、割安でも“買うべきではない家”の特徴について解説します。
住宅ローン減税の対象外になる家
住宅ローン減税(住宅ローン控除)は、マイホーム購入時の大きなメリットです。
ローン残高の0.7%が所得税や住民税から控除されるため、実質的な負担を大幅に軽減できます。
しかし、この制度は誰でも使えるわけではありません。次のような要件を満たす必要があります。
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一定の省エネ性能を満たす住宅
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床面積が原則50㎡以上
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中古住宅は、耐震基準を満たしていることを証明できる
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住宅ローンの返済期間が10年以上であること
特に中古住宅では「耐震基準適合証明書」を取得できないと減税対象外になります。
割安な中古住宅は、こうした証明が取れないケースが多く、結果として節税の恩恵が受けられません。
短期的には安く買えても、10年間で受けられる数十万~数百万円の減税を逃すことになり、結果的に“安物買いの高い買い物”になる可能性があります。
耐震性能や住宅性能が低い中古住宅
日本は地震が多い国です。建物の耐震性能は命に関わる最重要ポイントといえます。
特に注意したいのは、1981年の新耐震基準(昭和56年)以前に建てられた住宅です。
これらの住宅は、現在の基準より耐震性能が低い場合が多く、補強や大規模修繕が必要になる可能性があります。
また、以下のような物件も要注意です。
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壁量が不足している
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基礎や構造部分にひび割れがある
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雨漏り歴がある
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設備が旧式で修理費がかさむ
割安に見えても、購入後に数百万円規模のリフォームが必要になるケースもあります。さらに、住宅性能が低い家は将来の売却時にも不利になり、資産価値が下がりやすいという問題もあります。
将来的に資産価値が下がる可能性が高い家
住宅は購入時よりも“売却するときの価値”が非常に重要です。
近年は人口減少や郊外の空き家増加もあり、資産価値の二極化が進んでいます。
次のような特徴を持つ住宅は、安くても資産価値が下がりやすい傾向があります。
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駅から遠く、交通アクセスが悪い
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周辺に商業施設や医療機関が少ない
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再建築ができない、もしくは再建築に制限がある土地
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日当たりや形状が悪い“クセの強い土地”
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将来の省エネ基準に適合していない住宅
こうした要素があると、将来売りたいと思っても買い手がつかず、値下がりしやすくなります。購入時は「割安でラッキー」と思っていても、出口戦略を考えると損する可能性があります。
“トータルコスト”で見ると割高になる家
家の購入では、つい価格だけに目が行きがちです。しかし、本当に考えるべきは総合的な負担です。
例えば次のような費用も考慮する必要があります。
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住宅ローンの総返済額
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税金(固定資産税・都市計画税)
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火災保険・地震保険
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修繕やリフォーム費用
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光熱費(省エネ性能が低いと高くなる)
割安物件は省エネ性能が低かったり、設備が旧式だったりするため、住み始めてからのコストが大きくなるケースがあります。長期的には“割安”ではなくなってしまうのです。
まとめ:安さだけで選ぶと後悔する
家は価格が安いほど魅力的に見えます。しかし、住宅ローン減税の対象外だったり、性能が低かったり、将来の資産価値が下がりやすい住宅は、長い目で見ると損をします。
購入前にチェックしたいポイントは以下の4つです。
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住宅ローン減税を受けられるか
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建物の耐震性能・省エネ性能に問題はないか
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将来的な資産価値はどの程度期待できるか
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トータルコストで割高にならないか
安い物件には必ず理由があります。価格に飛びつかず、冷静に「本当にお得なのか」を判断することが大切です。
