相続の相談を受けていると、家族の仲が良く見えるご家庭でも、ちょっとした認識のズレから大きなトラブルに発展することがあります。
その中でも特に揉めやすいのが「不動産」、とくに親が住んでいた自宅です。
預金や有価証券のように数値が明確な資産とは違い、不動産は評価方法や価値の捉え方が人によって異なります。そのため、相続人同士で話を始めた瞬間から意見が割れやすいのです。
この記事では、不動産がなぜ相続トラブルの“ダントツ1位”になりやすいのか、そして事前にどんな準備をしておくとモメごとを避けられるのかを、専門家の視点からわかりやすく整理します。
なぜ「不動産」が一番揉めやすいのか
① 価値が明確に決まらない
不動産の価値は以下のように複数の評価軸があります。
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固定資産税評価額
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相続税評価額(路線価など)
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実際に売った場合の価格
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不動産会社の簡易査定
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鑑定士による正式な鑑定額
同じ不動産でも、評価方法によって数百万~数千万円の差が出ることも珍しくありません。
そのため、相続人によって「この家は高い」「いや、そんなに価値はない」と意見が分かれてしまうのです。
② 相続人ごとに“利害”が違う
例えば、以下のようなパターンが最も多いです。
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長男(同居していた):「自分が住み続けたい。価値は低めでいい」
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別居の妹:「平等に分けたいから、もっと高い価値で評価すべき」
双方にとっての“正義”が違うため、話し合いが感情的になりやすいのが特徴です。
③ 分けにくい資産である
現金は分ければ済みますが、家は分割できません。
遺産分割でよく起きるのは以下の問題です。
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住み続けたい人がいる
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売却したい人がいる
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一部の相続人が「自分の取り分が不公平」と感じる
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共有名義にした結果、将来売れなくなる
この「分けにくさ」が、相続実務では最初に衝突が起きる原因になります。
不動産相続で実際に多いトラブル
① “実家の価値”をめぐる争い
相続人同士が、それぞれ不動産会社の査定を持ち寄って議論が平行線になるケースはよくあります。
簡易査定は高めに出る傾向があるため、「この金額を基準にしたい」と主張すると揉めやすくなります。
② 家に住む人・住まない人の不公平感
家を引き継ぐ人だけが得をする構図になりがちです。
そのため、代償金(ほかの相続人に払う補填金)が発生しますが、この金額設定をめぐって争いになることも多いです。
③ 共有名義にしてしまい、後で大問題に
「とりあえず権利を共有すれば安心」と安易に決めると、後々売却・管理・リフォームの判断が全く進まなくなることがあります。
共有は最後の手段だと覚えておくべきです。
モメないために事前にやっておくべきこと
① 家族で“価値の前提”を共有しておく
相続が起きる前に、
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不動産の大まかな価値
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将来の売却の可能性
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誰が住むのか
これらを「ざっくり話しておく」だけで相続時のトラブルは大幅に減ります。
② 評価方法を理解しておく
家族全員が、
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固定資産税評価
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路線価
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実勢価格
この違いを知っているだけで、議論の土台が整います。
特に、「実勢価格=本当の価値」ではないことは必ず共有しましょう。
③ 専門家に早めに相談する
不動産鑑定士の鑑定書があれば、感情的な話し合いが落ち着きやすくなります。
また、税理士・司法書士・不動産の専門家に早めに相談することで、最適な落としどころを作りやすくなります。
まとめ:不動産は“事前準備でトラブルの8割が防げる”
相続の現場では、不動産が原因のトラブルが最も多いと言われています。
その理由は、価値が曖昧で評価方法が複数あること、そして相続人それぞれの立場や思いが大きく異なるためです。
しかし、これは「避けられない問題」ではありません。
実際には、生前の準備と情報共有だけで、相続トラブルの大半は未然に防ぐことができます。
大切なのは次の3点です。
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不動産の価値を家族で共有しておくこと
どの評価方法を基準にするのか、実際の市場価格はどのくらいなのか。
ざっくりした話し合いでも、あるとないとでは全く違います。 -
“誰が住むのか”“売るのか”といった方向性を早めに話しておくこと
住み続ける人と売却したい人で意見が割れるのは当然なので、事前に方向性を確認しておくと、相続時の衝突が大幅に減ります。 -
専門家の力を積極的に使うこと
不動産鑑定士の鑑定、FPのアドバイス、税理士や司法書士の意見など、第三者の視点が入るだけで話し合いは驚くほどスムーズになります。
相続は「誰かが亡くなってから考える」と思われがちですが、実は生前の準備こそが最大の予防策です。
家族が健全な関係のまま相続を終えるためには、“話しづらいことを、少しだけ早めに話しておく”ことが非常に重要です。
不動産の価値や今後の扱いについて一度向き合っておけば、相続が起きたときでも、冷静で公平な判断がしやすくなり、後々の争いを避けることができます。
