「65歳を過ぎても働きたい」
「年金だけでは少し不安なので、仕事を続けたい」
このように考える方は年々増えています。
一方で、
・働くと年金が減るらしい
・在職老齢年金という制度がよく分からない
と、不安に感じている方も多いのではないでしょうか。この記事では、在職老齢年金の仕組みをできるだけやさしく解説し、働き方を考えるうえでのポイントをお伝えします。
在職老齢年金の基本的な仕組み
在職老齢年金とは、65歳以上で年金を受け取りながら働いている人を対象にした制度です。
ポイントはとてもシンプルです。
年金と給料の合計が、ある基準を超えると
年金の一部、または全部が調整されることがある
つまり、「働いて収入が多い人は、年金を少し抑えましょう」という仕組みです。
すべての人が対象になるわけではなく、年金が減らない人もたくさんいます。
現状と来年からの改正|在職老齢年金はどう変わる?
現状の在職老齢年金の基準(2025年度まで)
現在の在職老齢年金では、
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年金(老齢厚生年金の報酬比例部分)
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給料(標準報酬月額相当)
この2つを合計した金額が、月おおむね51万円を超えると、年金が調整されます。
超えた分の 1/2 が年金から止められる仕組みです。
そのため、
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フルタイムで働く
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役職があり給料が高め
といった方は、「思ったより年金が減った」と感じるケースも少なくありません。
来年(2026年4月)からの改正ポイント
2026年4月から、
在職老齢年金の支給停止基準額が引き上げられる予定です。
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現状:月 約51万円
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改正後:月 約62万円(予定)
つまり、これまでより11万円ほど多く稼いでも、年金が減りにくくなるという改正です。
改正で何が変わるのか?
この改正によって、
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年金が一部止まっていた人が
→ 止まらなくなる -
働き方を抑えていた人が
→ 年金を気にせず働きやすくなる
といった変化が見込まれます。
「働くと年金が減るから、これ以上働かない」という判断をする人が減ることが、今回の改正の狙いです。
数字で見ると、どう違う?
たとえば、
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給料:月45万円
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老齢厚生年金:月12万円
合計は 57万円 です。
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現状(基準51万円)
→ 基準を超えるため、年金が一部調整される -
改正後(基準62万円)
→ 基準以内なので、年金は減らない
同じ収入でも、来年からは年金が満額受け取れる可能性が出てくるということです。
なぜ在職老齢年金という制度があるの?
この制度が作られた背景には、年金制度全体のバランスがあります。
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現役世代が保険料を負担している
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高い収入がある人には、年金を少し調整する
という考え方です。
ただし、「働く意欲を下げてしまう制度ではないか」という指摘もあり、近年は見直しが続いています。
どんな人が年金カットされやすい?
在職老齢年金では、次のような違いが出ます。
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年金と給料の合計が低め → 年金は減らない
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合計が基準を少し超える → 年金が一部止まる
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合計がかなり高い → 年金が全額止まる
ここで大切なのは、「給料が高い=必ず損」というわけではないことです。
給料が多ければ、たとえ年金が一部止まっても、トータルの収入は増えるケースも多くあります。
最近の制度改正と見直しの流れ
現在の日本では、
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人手不足
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高齢者も働くのが当たり前
という状況になっています。
そのため、
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働くと年金が減る
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働く意欲をそいでしまう
こうした問題を解消するため、在職老齢年金は少しずつ緩和・見直しが行われてきました。
今後も制度が変わる可能性は十分にあります。
在職老齢年金で気をつけたいポイント
在職老齢年金で注意したいのは、年金だけを見て判断しないことです。
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給料
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年金
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社会保険料
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税金
これらをすべて合わせて、「手元にいくら残るのか」で考えることが大切です。
「年金が減るのがイヤだから働かない」と決めてしまうのは、少しもったいないかもしれません。
FPとしてお伝えしたいこと
在職老齢年金は、知っているかどうかで差が出る制度です。
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働き方を調整する
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勤務日数や時間を考える
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年金と給料のバランスを見る
こうした工夫で、無理なく、納得できる働き方を選ぶことができます。
まとめ|在職老齢年金は「仕組み理解」が第一歩
在職老齢年金は、
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働くと必ず損をする制度ではない
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正しく知れば、選択肢は広がる
という制度です。
これからの人生を安心して過ごすためにも、「何となく不安」で判断せず、一度、仕組みを整理して考えてみることをおすすめします。
